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<連載>「臨床研修医のための整形外科」第9回目は「骨・軟部腫瘍」がテーマです.私は一昨年から2年間,日本整形外科学会の専門医試験担当理事の仕事をさせていただきました.試験問題を作る仕事です.毎年,専門医試験の後に受験者の感想をアンケートにして集計しますが,そのなかに「頻度の低い腫瘍の問題が多いのに,頻度の高い外傷の問題が少ない」,「もっと外傷の配分を高くしてくれたら高得点がとれるのに」という感想をしばしば見受けます.外傷の多い一般病院に勤務しておられる受験生が多いためだと思います.一般病院で日常的に外傷をたくさんみていると,その谷間に致死性の悪性骨・軟部腫瘍が隠れてしまうことがあるので,専門医の資格試験としては,この配分を変えるわけにはいきません.著者の高橋正明先生が強調しておられるように,悪性骨・軟部腫瘍を疑うこと,疑ったら一刻も早く専門病院に紹介することが大切です.本稿を読んで,骨・軟部腫瘍の知識をもつことが大切なことはもちろんですが,同時に卒後研修の一時期に大学病院や腫瘍専門病院で悪性骨・軟部腫瘍を集中的に経験することが必要と,改めて感じました.
誌上シンポジウムは「骨折治療の最新知見―小侵襲骨接合術とNavigation system」がテーマです.この分野の進歩には,術中CT,透視可能な手術台など,高額な設備が必要です.この点について,複数の著者が論文の中で指摘しておられます.高額な設備投資や集学的医療の実現には,外傷医療の集約化,保険点数の再評価など政治,経済にかかわる問題を含み,医師の配置にも影響します.しかし従来わが国では,腫瘍の分野と違って,外傷医療の集約化が進んでいません.外傷医学の進歩に見合った外傷医療の集約化は,改めて議論すべき大きな問題ではないかと思います.
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