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あとがき
清水 克時
pp.746
発行日 2008年7月25日
Published Date 2008/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101334
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今月号の「視座」欄は,菅本一臣教授(阪大運動器バイオマテリアル学)が専門医制度の弊害について述べておられます.山は高きがゆえに尊からず.ひょろ長くて高いだけの専門は,ちょっとした地震や,嵐によってたちまち崩れてしまいます.裾野の広い富士山のような形が理想ではないかと思います.専門というのは静的なものではなく動的なものです.疾病構造の変化や,科学技術の進歩によって時代とともに変化しますし,また,文化の違いや国によっても変わるものです.制度によって守られることを期待するのでなく,専門の研鑽と同時に裾野を広げる努力を継続することが重要です.専門性の高さと裾野の広さは本来矛盾するものではありません.
専門医制度というと理念も大事ですが,一方で,実質的であるべきです.同業者のあいだで互いに評価し,専門医の質を担保するためには大きな手間と経費が必要ですし,資格を取得したり,維持しようとする意欲を持続させるためには,専門医の資格に経済的な裏づけが必要です.理念だけが走っているだけの専門医制度は,か弱いものになってしまいます.専門医が有効に作用するには,資格に応分の報酬を伴う必要があると思います.
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