--------------------
あとがき
清水 克時
pp.508
発行日 2012年5月25日
Published Date 2012/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408102356
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
今月号の「視座」は,京都大学iPS細胞研究所の教授にご就任された妻木範行先生の整形外科医と基礎研究についてのお話です.私も妻木先生とまったく同じ考えです.
日本の整形外科基礎研究は,大学院生などの若い整形外科医の努力に負うところがとても大きいです.国によって,そのシステムには違いがありますが,臨床医学をめざす若い整形外科医が一定期間,整形外科の基礎研究に携わり,見識を高めるということは,洋の東西を問わず広く行われています.多くの人は基礎研究に従事して,学位を取得すると,再び臨床医学の研鑽に戻り,基礎研究からは離れていきますが,基礎研究で培った見識や,人間関係は一生の宝です.立派な基礎研究を達成した医師が,立派な臨床医になる.文武両道といいますか,二足のわらじを立派に履きこなす整形外科医はけっこう多いように思います.日本語の「二足のわらじを履く」という言葉に似た英語表現を,アメリカの研究者から教えてもらったことがあります.「wear two hats」,「2つの帽子をかぶる」という言い方です.昔は職業によってかぶる帽子が違っていて,帽子を見れば職業がわかった…というのがこの表現の由来のようです.アメリカにも2つの帽子をかぶる整形外科医がたくさんいるんだと,この研究者は自慢していました.若い時に研究と臨床の二足のわらじを履きこなしたあと,一部の臨床医は大学の教官として,さらに臨床と研究の二足のわらじを履き続けます.そして,まれに,妻木先生のように,一生を基礎研究にささげる研究者も出現します.医学の発展のためには,このように若い医師が自由にキャリアを転換できるような環境が必要だと思います.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.