増大号特集 絶対! 整形外科外傷学
column
これからの技能習得に思いを馳せる
野田 知之
1,2
Tomoyuki NODA
1,2
1川崎医科大学運動器外傷・再建整形外科学教室
2川崎医科大学総合医療センター整形外科
1Department of Orthopaedic Surgery and Traumatology, Kawasaki Medical School
2Department of Orthopaedic Surgery and Traumatology, Kawasaki Medical School General Medical Center
pp.574
発行日 2024年5月25日
Published Date 2024/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408202975
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医師にも時間外労働の上限規制が適用されるいわゆる「働き方改革」がいよいよ2024年4月から施行されます.労務管理の適正化やタスクシフトの推進などが期待される一方で,自己研鑽の定義や取り扱い,非常勤派遣医師の減少の懸念など多くの未解決な問題を抱えたうえでのスタートとなりそうです.緊急対応や緊急手術を余儀なくされるわれわれ整形外傷医の「働き方」も大きく影響を受けそうで,十分な人員で業務効率化を図った施設でないと立ち行かなくなる可能性も容易に想像されます.
さて一方で,重度の関節内骨折や開放骨折,骨盤・寛骨臼骨折など複雑な整形外傷の治療においては高度な専門知識と手術手技が必要とされ,その習得は決して一朝一夕には成し得ません.「働き方改革」と「高度な技能習得」,これら相反する事象をいかにして効率的に両立させるか,ということが今後ますます重要になってきます.ブラック労働このうえない自身の若い頃を美化するつもりは毛頭ありませんが,圧倒的な数の症例を否応なく経験し,その後の糧とすることができていったのは,凡庸な自身にとって貴重なことでした.昔も今も時代や環境がどうであれ,トップ(あるいはボトム)クラスの人の振る舞いや伸び方には大きな差はないと考えますが,かたや大多数を占める中間層の成長は環境やシステムに大きく左右されます.そういう意味ではこれを機に,これらの人を叱責する,あるいは発表や論文作成などを命じることが憚られるシステムになっていくことも懸念されます.
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