異端とグローバルスタンダード アメリカ医療はどこへ行くのか?【最終回】
たとえば,南北戦争に思いを馳せる
森井 大一
1
1エモリー大学公衆衛生大学院医療政策&マネジメント学科
pp.530-532
発行日 2013年6月15日
Published Date 2013/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102890
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MJ専属医の処分
2009年6月,マイケル・ジャクソンが麻酔薬の併用により死亡した.この件で刑事責任を問われた元専属医師コンラッド・マーレーについては日本でも大きく取り上げられたので,今さら,経緯を説明する必要はないだろう.感覚的には麻酔薬を病院外で投与した時点で「医者失格」と思われるが,感覚的即断はいったん脇に置き,実際にどういった手続きで「失格」になったのか振り返ってみたい.このマーレーの一件は,医師の管理を誰が行うのか,という点で非常に興味深い.
2009年8月以降の逮捕・訴追という流れのなかで,2010年2月に,マーレーが医師免許を交付されていたカリフォルニア州のステイトボードが,麻酔薬の使用を禁止する処分を下した.この時までに,マーレーは今後カリフォルニアでは診療行為をしないという自発的な宣誓を立てていたが,翌月,裁判中にもかかわらずステイトボードは「(自ら課した)麻酔薬使用禁止は不十分であり,医師免許そのものを停止するべき」とより踏み込んだ判決を求める声明を出した.被告は法廷で無罪を主張しており,司法判断が下る前に(州)政府機関がこのような態度表明をすることは,たとえば日本の厚生労働省が行うこととしては考えにくい.さらに,司法が医師の過失責任を認めなかった場合でさえもステイトボードが独自に医師免許の停止・剥奪を含めた追加の処罰を行う権限をもっているというから驚きである.
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