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あとがき
吉川 秀樹
pp.866
発行日 2019年8月25日
Published Date 2019/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201453
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超高齢社会を迎え国民の総医療費が高騰する中,本年4月より厚生労働省は,医療費削減を目的として,オプジーボを代表とする高額な薬剤や医療機器に関する価格調整を開始しました.そのための指標の1つとなるのが,医療の費用対効果です.医療経済や病院経営の視点から,費用対効果の評価・検討は重要であることは否定しませんが,それに影響されて,「医師が患者を救う」という医療の基本理念を忘れることは最も危険な行為です.仮に,費用対効果が低い手術や治療法であっても,患者にとって,かけがえのない医療が制限されることは厳に慎むべきです.病院経営においては,患者に必要な治療は継続しつつ,より費用対効果の高い治療により収益を上げ,全体の経営を健全化するという,懐の広い考え方が重要だと考えます.
今月号の誌上シンポジウムでは,「整形外科治療の費用対効果」を初めて取り上げました.整形外科における費用対効果は,いまだ不明な点が多いですが,今回,多くの執筆者に様々な専門領域から,現時点で明らかとなっている知見を紹介していただきました.大阪市立大学の加葉田先生には,統計学者の立場から,費用対効果の評価方法の基本を,整形外科医にもわかりやすく解説していただきました.また,整形外科医からは,脊椎外科手術,骨軟部腫瘍治療,人工股関節手術など,各分野別の費用対効果を分析していただきました.今後,さらに詳細な検討が積み重ねられることにより,費用対効果を認識しつつ,優れた整形外科医療が提供されることを切に期待しています.
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