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総選挙も終わり,日本政府の混乱,世界的な経済不安が継続し,明るい話題がありませんが,このような内外ともに混乱,動揺し,不確かな時代にこそ,『個人の生き方』,『組織のあり方』が最も試される時ではないかと考えます.経済界では,世の中の主な価値基準には,『損か得か』『好きか嫌いか』『本物か偽物か』『善か悪か』の四つが共存しており,それらが循環して,時代の価値観を主導しているといわれております.この四つの価値基準は,景気の動向に伴って循環してきたようです.景気がよくなってくると『損か得か』,景気が天井を打つ時期には『好きか嫌いか』という概念が支配的になるようです.景気が下り坂になると,『本物か偽物か』の概念が出て来て,現在のように景気が低迷し続けると『善か悪か』の論理が台頭して来るようです.過去に善悪が主流であった時期は,昭和初期から太平洋戦争が終わるまでの時期です.各々が自己の正当性を主張して独善に走る傾向が強くなり,軍部が暴走したと考えられています.善悪の概念が主流になるのは,非常に危険な時代であると言えます.
一方,名門企業が軒並み不振に陥っている中,いくつかの新規ベンチャー企業の中には,急成長を遂げている会社があります.この理由のひとつに企業のオープン性が重要視されています.日本人は,元来オープンにすることが好きでなく,大学講座もその例外ではありません.整形外科領域でも,いまだに大学間や病院間で成績を競う傾向があり,他の組織のよい点,優れた点を評価・採用しないという閉鎖性がありました.他大学が開発した人工関節は使わないなどは,その一例であります.しかし時代は,全く新しい局面に入ったと考えられ,医学界もその例外ではなく,『いいものはいい』という謙虚な姿勢が必要であると考えます.今後は個人も教室も『オープン』というものに耐え,研究面でも臨床面でも,産学連携や,他学部,他病院,他大学との多施設共同研究を組むなど,新たな戦略を立てていくことが重要になってくると考えます.
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