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本年になり,STAP細胞の真偽について,マスコミは連日,過熱報道しています.われわれ整形外科医にとっても,運動器の再生医療を考えるうえで,極めて関心の高い研究であります.その存在については,今後の検証を待つ必要がありますが,最も大切なことは,この発見が「新奇」というだけでなく,「真実」であるかどうかという点であります.研究者は,私自身も含め,真偽を確かめず,新奇なものに興味を持ち,飛びつきがちです.また,超一流雑誌の「Cell」や「Nature」に掲載されれば,学会やマスコミも騒ぎ立てるという危険な傾向もあります.発見は,掲載雑誌やimpact factorによって評価されるのではなく,本来,「人類への貢献度」で評価されるべきです.その素晴らしい実例が,緑色蛍光タンパク(GFP)遺伝子を単離し,2008年にノーベル賞を受賞した下村脩博士の論文です.1962年に,一般にはあまり知られていない,J Cellular and Comparative Physiologyという雑誌に掲載されました.しかし,以後の被引用回数は,膨大すぎて計算不能だそうです.さらに,GFPを用いた研究は,医学のみならず,生物学,基礎科学の領域で,あまりに基本的・標準的手法になり過ぎて,最近では,下村論文を引用する研究者もいないのが現状です.つまり,いかに「新」であるかよりも,いかに「真」であるかが最も重要であります.整形外科の研究論文でも,「新」であれば,上司や教授に評価され,一流雑誌に掲載され,一時的には脚光を浴びることがしばしばあります.しかし,それが「真」でなければ,一瞬のうちに消え去り,忘れ去られるものであり,実に寂寞たるものです.自警の念を持って,真理の探究に努めたいと思います.
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