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あとがき
吉川 秀樹
pp.926
発行日 2017年9月25日
Published Date 2017/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200919
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地球温暖化の影響か,記録的な猛暑が続いたこの夏ですが,いかがお過ごしでしょうか? 大雨災害や詐欺事件,政界でも大臣や党代表の辞任など,不安定な出来事が多い日本列島です.世の中の乱れに影響されず,学問の原点に戻って整形外科学を楽しみたいものです.
本号の誌上シンポジウムでは,菊地臣一先生の企画・編集で『パーキンソン病と疼痛』を特集しています.パーキンソン病は腰痛を代表とする慢性疼痛が特徴的ですが,意外にも,整形外科のシンポジウムで取り上げられることは稀です.読者にとって大変有益な情報を提供するものと考えます.発見者のジェイムズ・パーキンソンについては,『アルツハイマーはなぜアルツハイマーになったのか:病名になった人々の物語』(講談社)に詳細な記述があります.本書はパーキンソン病,アルツハイマー病,アスペルガー症候群など,人名が病名となった10疾患と,3つの人名由来の医学用語に関する物語が掲載されており,大変興味深いです.1755年にロンドンで生まれたジェイムズ・パーキンソンは学会や世相を騒がせた孤高・異能の外科医です.17歳のときから父ジョンの「パーキンソン父子医院」で外科医・助産師として働いています.王立人道協会の記録によれば,首つり自殺した青年や落雷に打たれた瀕死の男を蘇生させたり,時の国王,ジョージ3世の暗殺容疑でも告発されています.1817年,62歳のとき,医学書『振戦麻痺(shaking palsy)について』を上梓し,患者6人の科学的な観察症例を世界に先駆けて公表しました.ジェイムズ・パーキンソンの慧眼は,この振戦麻痺の根本原因は脊髄の上部の延髄にあると見抜いた先見力でした.
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