- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本年4月,2年ぶりの診療報酬改定がありました.全体改定率は+0.004%と横ばいでしたが,診療報酬(本体)は,+1.38%(薬価が-1.38%)で,約5,500億円の増加となっております.内訳では,病院勤務医など医療従事者の負担軽減に対して1,200億円の増加となっております.中でも整形外科の手術点数は,他の外科系と比べて,大幅な増加となっております.主な整形外科手術における加算は,関節鏡視下十字靱帯縫合術:+5,070点,人工関節置換術(肩,股,膝):+6,980点,脊椎側弯症手術:+11,230点,脊椎骨盤悪性腫瘍手術:+23,330点などが挙げられます.一手術野での複数手術の算定も一部可能になりました.また,先進医療として行われていました,ナビゲーション使用の人工股関節置換術が,このたび保険収載されました.心血管系,脳神経外科,眼科などと比較して,まだまだ,低廉の傾向はありますが,厚生労働省でも,整形外科手術の社会的重要性,手術手技の難度などがようやく認知され,評価されつつあるという印象です.
このような時機に,整形外科の診療報酬について,基礎から学び,考えるため,本号のLECTURE欄で,医療経済学のエキスパートである大阪大学田倉智之教授に『医療経済からみた診療報酬の考え方―整形外科領域はどうなるか』を論述していただきました.医療の価値(value of medicine),費用対効果(cost-utility analysis),質調整生存率(quality adjusted life year)などをわかりやすく解説していただき,大変理解が深まりました.整形外科医も,日常臨床のみに追われることなく,整形外科手術が有する「医療の価値」「社会経済的な価値」を共有しながら,その価値に見合った国民負担(診療報酬)のあり方を考えていく必要があると改めて認識させられました.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.