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はじめに
パーキンソン病(Parkinson's disease:PD)は,アルツハイマー病に次いで多い神経変性疾患である.加齢とともに頻度は増加し,障害調整生命年からみた負担度も世界的に増大の一途である1).病理学的にはαシヌクレインを主要構成成分とするLewy小体の出現と,それに伴う黒質神経細胞の脱落を特徴とする.最近の研究により,黒質神経細胞脱落が生ずる前に,腸管や心臓交感神経など末梢自律神経系や嗅神経を中心として,全身性にαシヌクレイン病理が出現すること,脳では延髄,橋,中脳,大脳辺縁系,大脳新皮質へと病変が進展する症例の多いことが明らかとなった2).臨床的にも病理変化に呼応して,パーキンソニズムの出現する20年以上前から便秘をはじめとした自律神経不全,嗅覚低下,レム睡眠行動異常,うつなどを認める.一連の流れを受け,国際パーキンソン病・運動障害疾患学会(MDS)はProdromal PDの研究的診断基準と3),PDの臨床的診断基準を定めた4).
適切な外科的治療を行うには,正確なPDの診断が大前提であるため,まずMDSの提唱したPDの臨床的診断基準についてアルゴリズムを含めて紹介する.次に,PDの代表的手術療法である難治性運動合併症に対する脳深部刺激療法やL-ドパ持続経腸療法(device aided therapy:DAT)について,『パーキンソン病診療ガイドライン2018』のアルゴリズムに沿って,その適応病態を概説する.最後に,PDでは椎体骨折や頚椎症性脊髄症に対する手術に加え,一部の症例で特徴的に認める姿勢異常に対する矯正手術,さらにはすくみ足に対する脊髄刺激術など整形外科的アプローチが世界的に試みられている.現時点では,その適応について,エビデンスとしてアルゴリズムを示すことはできないものの,整形外科医と脳神経内科医が共有すべきと思われる特徴的症候,アルゴリズム,手術に関し,誌面の許す範囲で最近の知見を整理し,提示する.
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