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あとがき
吉川 秀樹
pp.454
発行日 2018年5月25日
Published Date 2018/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201092
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あとがき
骨・関節の感染症の制御は,整形外科医にとっては,歴史的にも長年苦闘を続けてきた課題の1つです.そこで思い出されるのがリスター鉗子で有名な英国の外科医,ジョセフ・リスター(1827〜1912年)です.1840年代,外科医ロバート・リストンが,エーテルを用いた全身麻酔手術に成功して以来,疼痛を伴う四肢外傷に対する外科手術が急速に普及しました.その結果,四肢の切断術などが,痛みを伴わず実施可能となりました.しかし,全身麻酔による無痛手術が多く行われるようになった反面,皮肉にも,術後の骨髄炎や敗血症で死亡する症例が増加しました.当時,手術場では,消毒という概念はなく,死亡原因は不明のままでした.リスターは,「術後の創部の化膿は,細菌感染である」と考え,手術器具,術者の両手,術野をフェノールで消毒し,手術に臨みました.その結果,開放骨折でも極めて良好な成果を得て,1867年,「The antiseptic system(無菌手術法)」として10症例をLancet誌に報告しました.以後,各種消毒法が開発され,手術による死亡率は激減し,人類に大きな貢献を果たしました.昨年はリスターの論文発表から150周年を迎え,英国ではリスターの業績を称え,記念出版やシンポジウムが開催されました.
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