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10月9日,下村脩博士が,緑色蛍光蛋白質(GFP)蛋白単離の功績により,ノーベル化学賞に輝きました.日頃,整形外科研究,論文にも頻繁に登場するGFP蛋白の単離が,1962年に日本人により行われたことを知り,驚きと感動を覚えました.下村博士は,「オワンクラゲを見て,美しい,不思議だと思った.どうしてこんな色が出るのだろうかと疑問に思って,研究を始めた.応用なんて考えなかった.」と会見で述べています.第一に,研究の動機が素晴らしいと思いました.研究の一端を担っているわれわれ整形外科医も是非「美しい,不思議だ」と思って,研究を始めたいものです.第二に思ったことは,いかにすぐれた発見でも,それに注目し,育て,応用してくれる研究者が必要であるという点です.日本では,あまり報道されていませんが,GFP研究の成功には,同時受賞のChalfie博士とTsien博士の貢献も大きいと考えます.1990年代になり,この2人によって,GFP遺伝子が,遺伝子組換え技術を使って細胞内に導入され,蛍光発光メカニズムの解析が進み,発光タグとして医学,生物学研究に大きな貢献をもたらしたのです.この例のように,研究には,「種をまく人」,「育てる人」,「実らせる人」が必要で,それぞれに欠くことのできない大切な役割があることを実感できました.また,10月24日,京都で開催された第23回日本整形外科学会基礎学術集会では,日本整形外科学会員である山中伸弥先生が「iPS細胞の展望と課題」を講演され,多くの整形外科医が感銘と刺激を受けました.一日も早く,iPS細胞の臨床応用が成功し,下村博士に続くことを期待しています.
さて,今月号の論述では,THA,TKA,PLIFなど整形外科臨床で頻度の高い重要な術式の注意点,合併症など興味深い内容が多く盛り込まれています.また,検査法では,腰椎椎間孔外狭窄病変のユニークな診断法が報告され,今後の臨床の場での普及が期待されます.総説では,腰部脊柱管狭窄症を取り上げ,病態と血流の関連を解説していただきました.全般に今月号は,人口の高齢化を反映してか,加齢性疾患,脊椎変性疾患をテーマにした論文が多く掲載されている印象です.『最新基礎科学』『小児の整形外科疾患をどう診るか?』も好評連載中ですので,是非御一読ください.今後も,さらなる内容の充実を目指し,努力したいと思いますので,来年も,『臨床整形外科』をご愛読ください.
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