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あとがき
吉川 秀樹
pp.584
発行日 2010年6月25日
Published Date 2010/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101755
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本年は,大阪大学の源流とされる適塾を開いた緒方洪庵先生の生誕200年を迎えます.昨年は,テレビドラマ『Jin-仁-』でも話題を集めました.洪庵は,ドイツの医師フーフェランドによる医師の心構えを説いた『扶氏医戒之略』を医師の心得として出版し,広く志を伝えました.「医の世に生活するは人の為のみ,己が為にあらずということを医業の本旨とす.」「病者に対しては,ただ病者を視るべし.貴賎貧富を顧みることなかれ.」などの有名な言葉が残っています.全国から洪庵を慕い多くの若者が集い,福澤諭吉,橋本左内,大村益次郎など幕末から明治維新にかけて活躍した多くの人材を輩出しました.また,当時流行した天然痘感染から人々を救うことに情熱を注ぎ,道修町に除痘館を開きました.やがて洪庵は幕府から請われて江戸城に入り,奥医師兼西洋医学所頭取となり,医師として最高の地位についたわけですが,自由に市中の人々と交わり,塾生たちと過ごした適塾での日々を懐かしんだそうです.その適塾は,今も大阪の北浜に現存しています.
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