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あとがき
今年は平昌冬季五輪・パラ五輪,FIFAワールドカップなど世界的に注目されるスポーツイベントが目白押しで,2019年ラグビーワールドカップ,2020年五輪・パラ五輪など日本で開催されるビックイベントを控え,スポーツに対する関心は高まる一方です.そうした盛り上がりの一方で,“e-Sports”の台頭がめざましいことはご存じでしょうか.私にとっては,PCゲームから始まり,今ではインターネットを介して対戦し中には多くの賞金を得る大会もある,程度の知識しかありませんでした.“e-Sports”はエレクトロニック・スポーツの略で,電子機器を用いて行う娯楽,競技スポーツ全般を指すと定義されています.それが2022年アジア競技大会で正式なメダル種目に決定,というニュースに多少の驚きを感じました.日本ではスポーツを「運動・体育」と捉えがちですが,本来スポーツのもつ「楽しむ・競技」という意味からすれば,欧米ではチェスやビリヤードもスポーツとして認知されていますので,そうした発想は当然かもしれません.やがては市場として遅れている日本でも認知度が増し競技人口も増えるでしょう.そうなると,いずれどこかの学会で「e-Sportsによるoveruse syndrome」といったシンポ・パネルが企画されたり,用語集に「overuse e-Sports injury」という用語が収載されたり,「日本整形外科e-Sports医学会」という学会ができる時代がくるのではないか,など突飛な妄想をしてしまいます.
一方で,WHOは「ネットゲーム依存は『病気』」として,2018年6月公表予定のICD-11に「Gaming disorder」(ゲーム症・障害)を新たに盛り込むことを発表したというニュースを目にしました.「持続又は反復するゲーム行動」と定義していますが,オリンピックへの採用まで検討されているe-Sportsが広く普及する中,負の側面であるネット依存の対策に役立てることも目的なのだと思います.しかし,「競技」となる以上,練習にも当然時間をかけることになるでしょう.「ゲーム症・障害」とならずに,競技として成り立たせることができるのか,どこで一線を画すのか,e-Sportsを推進される方々・団体にとっては余計なお世話でしょうが,とても難しい問題が山積しているのだろうと要らぬ心配をしてしまいます.
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