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「知進知退 随時出處」 平成29年大相撲春場所で19年ぶりに日本出身の新横綱となった稀勢の里関が感動の逆転優勝を飾った後に,元横綱審議委員 内館牧子氏による,ある全国紙への寄稿にあった文言です.「進むべきところを知り,退くべき時を知り,いつでもそれに従う.」手負いの新横綱はなぜ土俵に上がり続けたのか.単に「あきらめない心」ではなく,経験や苦労から得た己の「知進」に従い,周りが何と言おうと,今は「進むべき時」と判断したのだろう,と.感動の千秋楽だったので,この寄稿は心に残っていました.この興奮が冷めやらぬうち,長年フィギュアスケート界を牽引してきた浅田真央選手が引退を宣言.シニアデビュー以来,浅田選手のアスリートとしての気持ちの強さにたくさんの元気をもらいました.諸事情あったと思いますが,最後は己の「知退」に従い,今が「退くべき時」と判断したのかもしれません.いかなる仕事,環境下だろうと「知進知退 随時出處」という背骨を持っている人間は強く,動じない.そうした人だからこそ,高みを目指せるのだと改めて感じた次第です.
さて,今月は「Lecture」では,診断が難しい腰痛の1つとして注目されている仙腸関節障害について,村上栄一先生に「仙腸関節障害の診断と治療」としてご執筆いただきました.「整形外科・知ってるつもり」では萩野 浩先生に「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015」として,ガイドライン作成の経緯,2015年度版改訂のポイント,治療薬の有効性の評価,薬物治療開始基準,そして新しいガイドラインで変わらないもの,変わるものについて,わかりやすくエッセンスを述べていただきました.「最新基礎科学 知っておきたい」では,鳥越甲順先生に「Tendon gel(腱の再生)」と題し,人工腱・靱帯の誕生の瞬間から今後の可能性までわかりやすくご紹介いただきました.基礎科学の面白さを垣間見ることができると思います.また“連載”の「慢性疼痛の治療戦略—治療法確立を目指して」では,三潴忠道先生に関節や神経の疼痛,腰痛に対する漢方製剤の基本をお示しいただきました.さらに多岐にわたる分野からの「臨床経験」,「症例報告」に加え,「論述」の3編の原著論文も非常にレベルが高く,読み応えがある内容になっています.ぜひ,ご一読ください.
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