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来月には平成24年度診療報酬改定の総額の改定率が決まることになっています.ご承知のように保険診療の対価は診療報酬点数表による“公定価格”であり,その改定率は医療機関に重大な影響を与えます.従来,わが国は低価格にも拘わらず高レベルの医療水準を維持してきました.平成9年(1997年)から平成13年(2001年)までのGDPに対するわが国の医療費の割合は8%で,OECDでは最低レベルでした(米国13.9%).一方,平均健康寿命や乳幼児死亡率などは世界のトップレベルを維持しています.ところが平成13年から現場を無視した医療費削減政策により,改定率が平成14年度(2002年)から4度も連続して引き下げられました.その結果,バッシングなどで忍耐の限界にあった医療従事者が経済的にも蹂躙され,危機的状況になりました.平成22年度(2010年)の診療報酬改定で漸くマイナス改定から脱しましたが,いまだに青息吐息の状態です.高レベルの医療水準を維持するためには医療機関の健全経営が不可欠です.東日本大震災の復旧・復興が優先課題ですが,改定率が少なくともマイナスに戻らないよう祈っています.
さて,今月号の視座に“しびれ”についての卓見があります.確かに“しびれ”は各人各様であり,病態を正確に把握することが困難なことが少なくありません.牛田先生が指摘しているように,神経メカニズムに基づいた定量的な診断学や治療に向けた新しいアプローチの開発が今後必要でしょう.そのほか,超高齢社会となっているわが国では骨粗鬆症や癌がある患者を治療する機会が増えており,そのために知っておきたい論文も掲載されています.論述には骨粗鬆症性椎体偽関節に対する広範囲後方固定併用手術の成績が纏められています.臨床経験には大腿骨近位部骨折に対する早期手術の有用性について論じられ,最新基礎科学には“癌幹細胞”という画期的な概念についてのわかりやすい概説があります.他に側弯症に関する調査報告,スポーツ医学に関するLECTURE,最近の筋電図についての“知っているつもり”,ポータブル超音波診断装置を用いた青少年期の野球肘検診,興味ある症例報告など豊富な話題で溢れています.
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