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毎年,4月になると新顔で教室が賑やかになります.新入医局研修医は皆フレッシュで,専門的な知識や技術を身につけさえすれば立派なお医者さんになれる方々が大部分です.しかし,性格はまちまちで,医師としての自覚が足りない人もいます.考え方が自己中心的で精神的にも幼く,幼稚園からやり直したほうがよいのではと思われる未熟者も稀に入ってきます.最近,成人になっても「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な能力」を身に付けていない人が増えてきているとのことです.経済産業省はこの能力を,前に踏み出す力,考え抜く力,チームで働く力の3つからなる「社会人基礎力」と名付け,その意識的な育成を提唱しています.医師にはさらに生命を慈しむ心,誠実性,利他主義を身に付ける必要があります.後期研修では医局と関連施設とが一体となって専門的知識や技能をバランスよく修得できるプログラムの作成を目指していますが,医師としての社会人教育を巧く施すことにも腐心しています.かつての入局時の未熟者が古顔として教室に戻り,立派な上級医として新参の研修医を指導する微笑ましい光景が見られるのも今日この頃です.
さて,今月号の誌上シンポジウムは「運動器の慢性疼痛に対する薬物治療の新展開」です.整形外科を受診する患者の主訴はほとんどが痛みであり,慢性疼痛で来院される患者も少なくありません.慢性疼痛は長期間の身体活動の低下をもたらし,メタボリック症候群や精神的障害の原因にもなります.特徴は,患者の症状が多岐にわたっているため病態を正確に把握することや適切な治療方法を選択することが困難であることです.本シンポジウムでは,「疼痛治療の今日的意義」,「筋骨格系の痛み―その慢性化のメカニズム」,「慢性疼痛患者のとらえ方」,「慢性疼痛に対する新しい薬物」として疼痛の評価,治療法の考え方,オピオイド鎮痛薬の適正使用,また運動器外科医からみた慢性疼痛患者へのアプローチについて,それぞれの専門家がわかりやすく解説なさっています.日常診療で難渋する慢性疼痛についての包括的な知識を蓄えるのに絶好の機会です.他にも腰部脊柱管狭窄症の診断方法を扱った「論述」,痛みに関する「LECTURE」,ユニークなタイトルの「工学から見た整形外科」,興味ある臨床経験や症例報告など豊富な話題に溢れています.
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