臨床外科交見室
鼠径部の解剖
川満 富裕
1
1獨協医大越谷病院
pp.916
発行日 1995年7月20日
Published Date 1995/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407905273
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鼠径部の解剖にはまだ未解明なところがあり,私にはいくつかの疑問がある.柵瀬先生が「鼠径ヘルニア手術のコツ」にお書きになった「鼠径部の解剖についての新しい知見」(臨外50:220,1995)はその意味で非常に有益なものであったが,私の疑問はむしろ深められた.そこで,その疑問と私見を述べ,柵瀬先生をはじめとする碩学のご意見を賜りたい.
私は小児外科医なので単純高位結紮術を宗としているが,内精筋膜に包まれたままのヘルニア嚢を内鼠径輪まで剥離した経験が少なくない.このとき,内精筋膜は精巣挙筋や鼠径管の後壁から容易に剥離され,鼠径管の後壁と腹膜の間に存在する筋膜に続くのが観察される.AnsonとMcvayの解剖書は,腹膜と腹横筋との間には横筋筋膜しかなく,鼠径管の後壁はおもに横筋筋膜からなると説く.では,内精筋膜に続く腹壁の筋膜は何なのだろうか.また,精巣挙筋は内腹斜筋の続きだと説き,鼠径管の後壁と精巣挙筋との関係には言及していない.鼠径管の後壁と精巣挙筋が連続していないとすれば,ちょうど長袖の腋が破れたように,精巣挙筋の筒は内鼠径輪の内側で開いているのだろうか.
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