臨床外科交見室
続・鼠径部の解剖
川満 富裕
1
1獨協医大越谷病院小児外科
pp.70-71
発行日 1996年1月20日
Published Date 1996/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902188
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この「交見室」で鼠径部の解剖に関する私の疑問と考えを述べたところ,金谷氏より貴重なご意見をいただいた.金谷氏が述べられるように,腹壁の解剖は腹筋を中心とする対称性の層状構造と考えれば理解しやすい.私も佐藤氏の論文は承知しており,精索には腹壁の層状構造が保たれていると思う1).しかし,私が内精筋膜は腹膜前筋膜に続くと考えるのに対し,金谷氏は横筋筋膜に続くと考えておられる.臆面もなく再び投稿したのは,この違いが大きな問題だからである.
成書には,ヘルニア嚢の剥離について内精筋膜を無視した記述が多い.精巣挙筋を開いたときに現われる白い光沢のある膜をヘルニア嚢とみなしているためである.この白い膜は,ヘルニア嚢ではなく内精筋膜である.内精筋膜はヘルニア嚢,精巣動静脈,精管を包んでいる2).この内精筋膜の筒を腹腔側に向かって周囲から剥離していくと,その続きが内鼠径輪を越えて下腹壁動静脈の背側に回り込み,鼠径靱帯を越えて後腹膜腔のほうに向かうのがわかる.この事実は鼠径部の解剖を理解するうえできわめて重要であり,手術の際にぜひ確かめていただきたいと思う.
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