臨床外科交見室
「鼠径部の解剖」を理解するための理論
金谷 誠一郎
1
,
加藤 大典
1
,
齋藤 信雄
1
1NTT京都病院外科
pp.1602-1603
発行日 1995年12月20日
Published Date 1995/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902161
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鼠径部は胎生期にguberna-culamの短縮,精巣の下降がみられる場所であり,他の腹壁の部位と比べ解剖を“複雑な”ものにしている.柵瀬氏が指摘した「腹膜前筋膜」(臨外50:219,1995),川満氏の疑問や知見「内精筋膜に続く筋膜が腹膜前筋膜」(臨外50:916,1995)などは鼠径部の解剖を“特殊な”ものとして捉えているので,腹膜前筋膜が鼠径部を離れるとどの膜に連続するのか,腹膜前脂肪組織はどの脂肪組織につながるのか,などのさらなる疑問が生じると思われる.
それらの疑問に答え,鼠径部の解剖を他の腹壁の解剖と“同様に”に理解するには,発生学を基にした佐藤氏の理論1)を応用するのがよいと考える.佐藤理論(表1)を図示すると図1のようになる.(2)と(3)との間がneurovascular corridorと称されている2)(下腹壁動静脈もこの層の中を走行する).後腹膜にある精巣が鼠径部において腹壁の構造を保ったまま斜めに下降してくるため3)(文献3,p377),精巣動静脈,精管,精巣は腎筋膜前葉と腎筋膜後葉との間の層に存在した状態のままである.
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