特集 消化器癌切除材料取扱いマニュアル
膵癌切除材料の取扱い(1)—臓器全割法と三次元再構成への応用
古川 徹
1
,
高橋 徹
2
,
小針 雅男
1
,
松野 正紀
1
1東北大学医学部第1外科
2東北大学抗酸菌病研究所病理学研究部門
pp.63-65
発行日 1993年1月20日
Published Date 1993/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407905109
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はじめに
腫瘍の進展を外科切除材料から正確に把握することの重要性は今さらいうまでもないが,膵腫瘍の場合は,必要とされる情報が切離面・剥離面・膵胆管・脈管・神経叢における浸潤の有無と程度,また癌発生の過程を知る上では膵管における異型上皮の分布など,多岐にわたる情報が必要とされる.これに応えるには,病変の三次元的な広がりの検索が避けられず,実際,切除膵の幅5mm程度の粗な全割は多くの施設で行われている.しかしこの程度の全割では,腫瘍の広がりに関する詳細な情報,例えば膵管・脈管などの枝を巻き込み,あるいは管内に進展する様式を知ることはできない.このために切除膵全体を対象とした膵管・脈管系の構築解析が必要で,例えば膵管系を径1mmの枝まで復元するには,最低1mmの間隔で全割標本を作らなければならない.そこでわれわれは鈴木の“Macroserial”法1)に改良を加え,膵切除材料から厚さ1.5mmの連続スライスを作成して全割を細分化する方法を考案した.ここでは,この方法を応用した膵管系腫瘍の三次元画像化を供覧する.
一方,全割のみを細分化しても,組織の形態そのものが原状に近い形で保存されていなければ意味がない.実際の外科の現場では膵切除材料の固定が適切に行われず,折角の材料も価値の低いものになっていることが少なくない.そこで今回は,標本の固定方法についてもあわせて解説する.
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