カラーグラフ 正しい外科切除標本の取り扱い方・4
電顕標本の試料作製・取り扱いの原則
吉澤 浩次
1
,
櫻井 達夫
2
,
斉藤 建
2
,
永井 秀雄
1
Kohji YOSHIZAWA
1
1自治医科大学消化器一般外科
2自治医科大学病理診断部
pp.869-873
発行日 2001年7月20日
Published Date 2001/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904505
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外科病理診断における電子顕微鏡の意義
当院では,腫瘍をはじめ腎生検などさまざまな組織の病理診断に電顕(電子顕微鏡)検索を行っている.ここでは,主に外科医が扱う「腫瘍」などの切除標本の電顕の有用性・試料の取り扱い方について述べる.外科医にとっては電子顕微鏡はあまり馴染みがなく,とくに最近では通常のパラフィン切片に免疫組織化学や分子生物学的手法が応用できるようになり,その簡便さ,普及に押され,以前より電顕検索の有用性が注目されなくなった感もある.
しかし,光顕(光学顕微鏡)と電顕とでは,どちらかといえば「光顕では組織」を,「電顕では細胞」を詳細に観察するものという特色の違いがある.したがって電顕検索は,光学顕微鏡では観察不十分な細胞レベルの微細構造を詳細に観察することで,腫瘍の組織発生・分化を知るうえで有力な情報を提供してくれることも多い.また,光顕で組織診断に迷う未分化な腫瘍などの鑑別に明快な所見を提示してくれる1).その反面,電顕では試料が小さく,観察できる範囲が非常に狭いため,氷山の一角をみているにすぎないという面や目的の腫瘍病変以外のものを誤ってみてしまう可能性も指摘されている1).したがって電顕の有用性と限界とをよくわきまえ,試料の選択・作製・観察を行うことが何より大切となる.
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