特集 薬物療法マニュアル
Ⅴ.悪性腫瘍の薬物療法
食道癌
西巻 正
1
,
神田 達夫
1
,
鈴木 力
1
,
畠山 勝義
1
Tadashi NISHIMAKI
1
1新潟大学医学部第1外科
pp.325-327
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903872
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はじめに
食道癌に対して本邦では頸胸腹部3領域リンパ節郭清が1980年代初めから積極的に導入され,従来きわめて不良であった食道癌の治療成績が5年生存率で50%前後にまで向上した1).しかし,いかに郭清範囲を拡大しても外科手術は局所療法であり,切除後に生ずる遠隔臓器再発には無力である.したがって食道癌の治療成績をさらに向上させるには全身療法である化学療法の併用は必須と考えられる.
このような補助化学療法の適応となるのは,不顕性の遠隔転移が生じている確率が高い食道癌である.リンパ節転移(N1)は食道癌切除例の最も強い予後不良因子であり,補助化学療法の適応と考えられる.特に転移リンパ節個数5個以上,3領域同時転移例,頸部リンパ節転移陽性の下部食道癌,そして壁内転移陽性例などは3領域郭清を行っても予後はきわめて不良で1,2),化学療法の併用が必要と考えられる.また隣接臓器浸潤のため切除不能となる食道癌(T4)も少なくなく,このような症例にresectabilityを得るためにも化学療法や放射線治療の適応がある.さらに初診時あるいは術後に遠隔臓器転移(M1)が明らかになった症例にも化学療法が行われる.
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