特集 薬物療法マニュアル
Ⅳ.術後愁訴と合併症の薬物療法
6.呼吸器系
無気肺
小倉 滋明
1
,
川上 義和
1
Shigeaki OGURA
1
1北海道大学医学部第1内科
pp.273-275
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903852
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基本的な事項
無気肺は肺の含気が減少したためにその容積が減少した状態をいう1).そのため無気肺は病名ではなく病態であり,胸部画像診断における所見の1つであるといえる.一般には肺・肺葉あるいは肺区域の容積が減少した状態を指しているが,通常は葉気管支より末梢の気管支が閉塞されても胸膜で境されていない肺では,Korn孔やLambert管などによる側副路が存在するため無気肺は生じない.しかし,炎症性病変の合併などで側副路が閉ざされていると区域性や亜区域性に無気肺が生じることになる.無気肺はその発生機序から閉塞性無気肺,圧排性無気肺,癒着性無気肺,瘢痕性無気肺に分類される2).このうち臨床上遭遇する最も重要な無気肺は肺癌によるものとICUや術後患者に合併するものがあり,両者とも閉塞性無気肺に分類される.
肺癌による無気肺は太い気管支に好発する扁平上皮癌の早期発見に重要な兆候である.一方,ICUで最も多い呼吸器の合併症は無気肺といわれ,術後患者の48時間以内の合併症は無気肺を考えるのが原則である.このような患者の場合,多くはポータブル胸部X線写真しか撮影できないことが多く,写真の条件が悪くて無気肺の読影が困難であることも多い.しかし,無気肺の発生は患者の病状の悪化や回復を遅延し,続発性に肺炎を惹起させる危険が高く,予後を左右しかねない.
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