特集 薬物療法マニュアル
Ⅲ.周術期の薬物療法
2.緊急手術
腹部大動脈瘤破裂
近藤 治郎
1
Jiro KONDO
1
1横浜市立大学医学部附属浦舟病院第1外科
pp.192-193
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903823
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腹部大動脈瘤の病態
腹部大動脈瘤はその病因の多くが動脈硬化によることから,本邦においても高齢化社会と食生活をはじめ生活環境の欧米化に伴い患者の数は増加している.大動脈瘤自体からの症状は,表に示すような合併症が発生しない限りほとんどない.時に拍動性腫瘤として自覚する場合と,いわゆる炎症性動脈瘤として疼痛を伴って発見されること以外は,健康診断や他疾患の検査の際に超音波検査やCT検査で偶然に指摘されることが多い.このようにして発見された腹部大動脈瘤は全身状態が許す限り瘤の大きさや瘤形態などから破裂予防を目的として待期的に手術治療が勧められる.
腹部大動脈瘤破裂は腹部あるいは腰背部の激痛を伴って発症し,ショック症状を呈することが多い.典型的な破裂は後腹膜腔あるいは腹腔内への出血で急性循環不全をきたす.破裂により大動脈外に出た血液量が多いほど手術によっても救命しがたい1).通常,待期的手術では3%位の死亡率であるのに対し,破裂例では50%位の死亡率である.種々な手術成績の報告はあるが,いったん破裂すると手術に至らず破裂するものも含めると全破裂例の20〜25%の救命率と思われる2).破裂から救命する手段は,なるべく早く少しでも良い状態のもとに緊急手術を行うべきで,一刻も早い破裂中枢部の大動脈遮断が要求される.
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