臨床外科交見室
器械吻合によるBillroth I法幽門側胃切除術—われわれの経験から
忠岡 信彦
1
1東京慈恵会医科大学青戸病院外科
pp.355
発行日 1999年3月20日
Published Date 1999/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903554
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Billroth I法による幽門側胃切除後の再建に自動吻合器を利用することはいまだに一般的とは言えないだろう.諸学会において自動吻合器による幽門側胃切除術に関する発表は散見され,いずれの報告でも有用性が確認されていることより,実施される機会は着実に増えてはいるはずである.また,近年の診療報酬点数表の改訂により,幽門側胃切除術に自動吻合器を利用することによるコストの問題も,保険請求可能という意味では解決されている.しかしながら全体から見れば,依然として器械吻合は少数派なのであり,これには「ここまで器械に頼るものか」という外科医独特の思いによるものが大きいと考えられる.実際のところ,学会会場で耳にする批判的意見の多くも「長年の修練によって得た技術に誇りを持つ外科医の感覚にはそぐわない」式の感情的なものが多い.そこで,拙稿ではどのようにしてわれわれは器械吻合を始め,どのように教室内に定着する手技に至ったのかを紹介してみたい.
1992年頃,小生は手術件数の大変多い多忙な病院に勤務していた.手術日には全身麻酔のいわゆるgross Opeが午前・午後と2件組まれており,午前の手術はなるべく午前枠で解決することが暗黙のうちに求められていた.手術室(10室),手術スタッフも常にフル稼働しており,手術時間が午後にずれ込めば,それは即午後手術の開始遅れを意味した.
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