遺伝子治療の最前線・2
遺伝子治療とバイラルベクター
岡田 秀穂
1
,
吉田 純
1
Hideo OKADA
1
1名古屋大学医学部脳神経外科
pp.1065-1068
発行日 1997年8月20日
Published Date 1997/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902821
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はじめに
近年の遺伝子工学および細胞生物学のめざましい進歩によって,多くの遺伝病の原因遺伝子,あるいはがん遺伝子,がん抑制遺伝子が明らかとなってきた.こうした異常な遺伝子を正常化するという遺伝子治療の可能性は,1980年代にレトロウイルスを用いた遺伝子導入法の基礎が確立するに至って,倫理的な面の検討も行われるようになり,1990年9月に,検討,合意済みの遺伝子治療の第1例がNIHでADA欠損症の女児に対して施行された.以来,米国を中心に遺伝病のみならず,AIDSや悪性腫瘍を対象にした様々な遺伝子導入方法による遺伝子治療のプロトコールが検討,認可され,施行されている.日本でも1993年4月に厚生省から遺伝子治療のガイドラインが発表され,着々と基盤づくりが行われつつある.しかし依然として遺伝子治療においては,いかに効率よく安全に目的遺伝子を導入するかが技術的な根本問題である.遺伝子の運び屋(ベクター)としては,ウイルスを用いる方法とそれ以外の方法に大きく分けられる.本稿ではそのうちで特にウイルスを用いた方法について,現在までの知見をできるだけ平易にまとめてみたい.
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