今月の主題 臨床医のための遺伝子工学
疾患治療への遺伝子工学の応用:遺伝子治療に向けて
これからの遺伝子治療
脳疾患の遺伝子治療
夏目 敦至
1
,
吉田 純
1
1名古屋大学医学部脳神経外科
キーワード:
in vivo approachとex vivo approach
Keyword:
in vivo approachとex vivo approach
pp.2184-2187
発行日 1997年11月10日
Published Date 1997/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904819
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脳の解剖,生理機能の複雑さゆえに,脳疾患には現在の薬物療法,手術療法では不十分であるものが少なくなく,新しい治療法として遺伝子治療が期待されている.ここ10年間の急速な分子生物学の発展は,一部の脳疾患に対する遺伝子治療を現実にした.まず,1992年に悪性脳腫瘍に対してNIH(米国立衛生研究所)でherpes simplex virus-thymidine kinase(HSV-TK)/ganciclovir(GCV)を用いる自殺遺伝子治療が試みられた.脳は以下の特殊性のために,遺伝子治療を有利にも不利にもしている.
脳は血液脳関門により他臓器より隔絶されているclosed cavityであるため,各種遺伝子導入ベクターを脳内に局注してもベクターあるいは導入遺伝子が他臓器に影響を及ぼす可能性が低いことや,脳は分化を終えた非分裂細胞からなる組織であり,レトロウイルスベクター,リポソームなどで遺伝子発現されないことである.本稿では,脳疾患の遺伝子治療に焦点をあてるが,紙面の都合上,限られた疾患の遺伝子治療の概念に触れる.詳細については,文末に取り上げる文献を参照されたい.
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