Japanese
English
総説
脳腫瘍の遺伝子治療
Gene Therapy for Brain Tumors
岡本 健太
1
,
水野 正明
2
,
吉田 純
1
Kenta Okamoto
1
,
Masaaki Mizuno
2
,
Jun Yoshida
1
1名古屋大学大学院医学研究科脳神経外科学
2名古屋大学大学院医学研究科遺伝子治療学
1Department of Neurosurgery, Nagoya University, Nagoya University, Postgraduate School of Medicine
2Department of Molecular Neurosurgery, Nagoya University, Postgraduate School of Medicine
キーワード:
gene therapy
,
malignant glioma
,
vector
,
HSV-tk
,
IFN-β
Keyword:
gene therapy
,
malignant glioma
,
vector
,
HSV-tk
,
IFN-β
pp.901-907
発行日 2000年10月1日
Published Date 2000/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901665
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はじめに
分子生物学,遺伝子工学などの目覚ましい進歩により,あらゆる疾患の病態が分子レベルで次々と解明されてきている。このような最先端科学は徐々に臨床医学の各分野にも応用されてきている。遺伝子治療も,こうした最新の医学の流れの中から生まれた新しい治療の1つである。
遺伝子治療の当初の発想は,遺伝性疾患に対する究極の治療法として,遺伝子異常を遺伝子工学の手法を用いて根本的に治そうというものであった。したがって,その対象疾患は単一遺伝子異常から起こるものが適当とされ,癌遺伝子と癌抑制遺伝子のさまざまな遺伝子異常が複雑に絡み合って発症する悪性腫瘍は当初,遺伝子治療の対象疾患としては不適当と考えられていた。しかしながら,遺伝子を「くすり」と考えることによって,いろいろなアイデアに基づく遺伝子治療が次々と考え出されていった。その結果,現在では遺伝子治療の対象疾患は遺伝性疾患よりはむしろ悪性腫瘍などの後天性の難治性疾患が多くなっている。1990年にアメリカで最初の遺伝子治療が行われて以来,現在ではアメリカをはじめとして世界中で3,000人を超える患者に遺伝子治療が行われてきている。
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