特集 術前ワークアップマニュアル—入院から手術当日までの患者管理
Ⅰ.術式別:術前患者管理の実際
9.膵臓手術
膵頭十二指腸切除術
中迫 利明
1
,
高崎 健
1
,
今泉 俊秀
1
,
吉川 達也
1
,
原田 信比古
1
,
羽鳥 隆
1
,
天満 信夫
1
,
武市 智志
1
1東京女子医科大学消化器病センター外科
pp.174-180
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902471
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膵頭十二指腸切除術(以下,PD)が行われる患者の術前管理について述べた.PDの利点は膵頭部領域の病巣をen-blockに切除し,一期に根治的治療ができることである.その欠点である臓器欠落症状は全胃幽門輪温存PDの登場により改善されつつあり,手術直接死亡も1%と向上している.術前管理のポイントは,PDを受ける患者に特徴的な病態を理解することである.閉塞性黄疸に対しては減黄処置,出血傾向に対してはビタミンK投与,重症感染に対してはDIC治療などが必要である.糖尿病に対しては十分なカロリーを補給し,インスリン投与による血糖管理が必要である.PDが適応される肝機能の目安はT-Bil10mg/dl以下,ICGR15,20%以下であり,心肺腎などの併存疾患や高齢者という因子は,通常の生活が可能であればPDの適応を妨げる絶対的な因子ではない.大切なことは心肺腎などに異常を認めた場合,ささいなことでも各科専門医および麻酔科医にコンサルトし,緊密な協力体制をとることである.
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