特集 施設別/新・悪性腫瘍治療のプロトコール
Ⅳ.肝癌治療のプロトコール
(3)京都大学医学部第2外科
田中 明
1
,
高田 泰次
1
,
山本 雄造
1
,
猪飼 伊和夫
1
,
森本 泰介
1
,
山岡 義生
1
Akira TANAKA
1
1京都大学医学部第2外科
pp.132-138
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901681
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本邦における肝癌患者の約80%に対し内科的治療が行われており,残りの20%に外科治療が行われているとされている.外科切除は限られた患者に対する治療ではあるが,その基本は,肝癌の進展,肝癌の局在,肝機能,肝切除量を考慮に入れ,術後肝不全をきたすことなく治癒切除を目標とすることにある.stage Iで治癒切除を行ったときは良好な結果が得られるが,治癒切除の全体からみると再発率は5生率で約50%と報告されている1).その再発をいかに低下させ,防止するか,再発した場合治療をどうするかが課題となる.一方,診断のついた時点ですでに治癒切除は期待できない症例も多くあり,これらの症例に対し,非治癒肝切除,肝動脈塞栓術(TAE),アルコール注入療法(PEI)を組み合わせ生存率を向上させることが課題となるが,われわれの教室では古典的外科切除の対象とならない進行癌に対しても積極的に外科治療に取り組み,QOLの改善,延命を計っている.
肝癌に対する肝移植による治療は成績が不良であり,ドナー不足を考慮すると,脳死肝移植の適応とは容認されにくい.しかし,腹水,黄疸,肝性脳症を伴う肝硬変末期に小さな孤立性の肝癌が併発している場合は,肝硬変,肝癌に対する治療として,肝臓移植は適応となると考えられる.
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