特集 施設別/新・悪性腫瘍治療のプロトコール
Ⅳ.肝癌治療のプロトコール
(4)県西部浜松医療センター外科
内村 正幸
1
,
脇 愼治
1
,
木田 栄郎
1
,
甲斐 信博
1
Masayuki UCHIMURA
1
1県西部浜松医療センター外科
pp.139-145
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901682
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ここ数年,超音波検査を主体とした画像診断の進歩と普及は,肝癌の診断をより正確に一歩前進させている.しかし,その治療成績をみると,依然として胃癌や大腸癌など他の消化器癌に比較して不良である.その第1の要因は宿主側にあり,これが合併する肝硬変であることに異論を唱えるものはいない.本邦における原発性肝癌追跡調査での肝硬変合併率は78%ときわめて高率である.この肝硬変の合併は,肝癌の外科治療において,過剰肝切除に基づく肝不全を招き,一方では,それを回避すべく切除範囲の縮小を余儀なく迫られ,残肝再発を高めるという癌治療のジレンマが存在する.また,肝硬変に合併する食道静脈瘤,胃潰瘍は合併疾患としての発生率が高く,山中ら1)によると,肝癌に合併した食道静脈瘤は14.5%,消化性潰瘍は20.0%である.第2の要因は腫瘍側の問題である.これは,肝臓癌の場合,門脈経由肝内転移が高率に存在することである.多中心性発育を特徴とする一面,肉眼的に治癒切除が行われていても残存肝の再発の頻度は高く,その大半が肝内転移と推定される.以上の観点から,原発性肝癌の外科的治療に際しては,肝機能を中心とした手術危険度の判定と形態面からみた腫瘍進展度に基づく治療法の選択が必要となる.
今回,自験原発性肝癌治療のプロトコールを紹介し,その成績と対策を述べる.
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