特集 外科患者・薬物療法マニュアル
Ⅴ.併存疾患をもつ外科患者の薬物療法
20.肝硬変
斎藤 昌三
1
,
森 秀明
1
1杏林大学医学部第3内科
pp.196-198
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900993
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肝は生体における代謝の中心的な臓器である.肝硬変患者では肝予備能が低下しており,肝障害のない患者と比べて麻酔や手術による侵襲は大きく,術後に肝不全などの重篤な合併症を来すことも多い.肝硬変患者に手術を行ううえでの留意すべき事項には次のようなものがある.
1.肝機能障害
2.体液・電解質異常
①低アルブミン血症による血漿浸透圧の低下,②高アルドステロン血症と,腎尿細管でのNa,水の再吸収による腹水や浮腫.
3.循環動態
①心拍出量の増加,②循環血液最の増加,③肝血流量の低下(特に門脈血流量の低下),④門脈圧亢進.
4.血液凝固障害
肝硬変では血液凝固障害・線溶系の障害を合併することが多く,その原因として,①肝障害による凝固因子の産生低下,②出血播種性血管内凝固症候群(DIC)による凝固因子の消費,③脾機能亢進による血小板減少,が挙げられる.
5.易感染性
網内系機能障害と補体などの生成障害の結果,感染症を合併しやすい.
6.糖代謝障害
肝硬変ではしばしば2次性糖尿病を合併する.この原因としては,①肝障害による血糖調節機能の低下,②インスリン作用の減弱と末梢組織での糖利用の低下,などが考えられている.
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