特集 保存的治療の適応と限界—外科から,内科から
乳癌
外科から
霞 富士雄
1
,
坂元 吾偉
2
1癌研究所乳腺外科
2癌研究所病理部
pp.1579-1583
発行日 1990年10月30日
Published Date 1990/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900276
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乳癌の根治的療法は言うまでもなく,今日に至るまで乳房切除術であることに変わりはない.乳癌の原発部分からの進展は症例によってさまざまであって,この無秩序に対しては乳房切除と,主として腋窩リンパ節の郭清は避けられない方法として永い間広く受け入れられてきた.しかし,乳癌は根治させたいが乳房は失いたくないとして,乳房を愛惜する気持ちは患者であれば誰もが抱く女性としての心からの叫びであろう.欧米では女性の乳房に対する認識が日本におけるよりも一段と強く,このために乳房温存療法が昔から根強く潜在的に行われ続け,近年,Halstedのradicalmastectomyがmodified radical mastectomyにとって代られた1970年代後半になって俄かに顕性化してきた.そして心配された予後については,mastectomyとほぼ同等のものが得られるという,これまでの経験では想像されなかった事実が判明してきている.この乳房温存療法はわが国では一般化していないが,欧米で成功裡に経過しており,わが国では乳癌が急増しつつある現況を基として,患者側からの乳房を温存することに対する要望,quality of lifeの主張が一段と高まっている1).
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