特集 保存的治療の適応と限界—外科から,内科から
食道表在癌
コメント
掛川 暉夫
1
1久留米大学医学部第1外科
pp.1364-1365
発行日 1990年10月30日
Published Date 1990/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900222
- 有料閲覧
- 文献概要
食道癌は,他の消化管癌と同様に治療の原則は外科的切除である.しかし,本疾患の外科的治療は生体に多大な侵襲をもたらし,術後も非生理的な状態におかれることとなるため,種々の問題が多い疾患の1つである.そこで,保存的治療により治癒せしめることが可能となれば,このうえないことである.通常,保存的治療の対象となる食道癌は,きわめて早期の癌腫か,もしくは外科的治療に耐えられない症例のいずれかということになる.後者はquality of lifeを考慮した状態で,いかに延命効果を得るかということが主体であり,今回の“保存的治療の適応と限界”というテーマが意図するものからはずれるが,それでは前者に対しては保存的治療によりどの程度の治癒が期待されるのかということが問題となる.
早期の癌種とは,通常,粘膜下層までにとどまる癌腫をいうが,食道癌においては,この深達度のみにより早期癌とすることには問題があり,これにリンパ節転移の有無を加味して判定するように規定されている.つまり,食道癌取扱い規約によると,粘膜下層までにとどまる癌腫を表在癌とし,この表在癌の中でリンパ節転移のないものをstage 0癌(早期癌)と規定している.
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.