FOCUS
肝細胞癌の切除可能性分類の提唱
進藤 潤一
1
Junichi SHINDOH
1
1虎の門病院消化器外科
pp.1178-1183
発行日 2024年10月20日
Published Date 2024/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407214672
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はじめに
近年の薬物治療の進歩は各種進行癌に対する外科手術の活躍の場を広げ,切除不能・切除困難な進行癌に対するいわゆる集学的治療の一環としての「コンバージョン手術」が各領域で議論されている.肝臓外科分野においては,大腸癌肝転移に対する化学療法から根治手術へのコンバージョンの意義が早くから認識され1),実臨床で広く実践されてきた.一方,難治癌の一つである肝細胞癌は,一般的に殺細胞性の抗癌剤が効きにくく,唯一エビデンスのある薬物であったソラフェニブも劇的な腫瘍縮小を期待できるような薬物ではないため,進行肝癌を薬物治療によって根治切除可能な状態へ導くことは困難と考えられてきた.しかし,2018年のレンバチニブの登場を皮切りに効果の高い新規薬物が次々と登場し,肝細胞癌領域においては進行症例に対する外科治療の意義に関する議論が近年活発となっている.
こうした背景の中,日本肝癌研究会と日本肝胆膵外科学会では2021年に「いわゆるborderline resectable HCCに関するワーキンググループ」を合同プロジェクトとして立ち上げ,新規薬物治療によって拡大するであろう外科治療範囲を定義づける試みが始められた.約3年にわたる議論の末,2023年11月に腫瘍学的見地からみた肝細胞癌の切除可能性分類がExpert Consensus Statement 2023として発表された.本稿では,肝細胞癌に対する外科治療を取り巻く現状と現時点でのunmet needsを明らかにし,腫瘍学的切除可能性分類の提唱の目的と今後の展望について概説する.
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