特集 意外と知られていない⁉ 自科の常識・他科の非常識
第6章:肝・胆・膵
脂肪肝の新診断基準MAFLDが提唱された
川口 巧
1
,
鳥村 拓司
1
1久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門
キーワード:
脂肪肝
,
肥満
,
代謝異常
,
糖尿病
,
メタボリックシンドローム
Keyword:
脂肪肝
,
肥満
,
代謝異常
,
糖尿病
,
メタボリックシンドローム
pp.557-559
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika128_557
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
脂肪肝診療におけるアンメットニーズ(図1)
1980年Ludwigらは過度な飲酒歴がないにもかかわらず,アルコール性肝障害と類似の肝組織像を呈する疾患を非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)と命名した1).NAFLDの概念が確立したことにより,食習慣の変化や活動量の低下などの生活習慣の悪化が肝線維化や肝がんのリスクとなることが明らかとなった.ただし,その後の病態解明によりNAFLDには病態がほとんど進展しないnon-alcoholic fatty liver(NAFL)と,進行性で肝硬変や肝がんのリスクが高いnon-alcoholic steatohepatitis(NASH)の異なる二つ病態が存在することが明らかとなった2).また,NAFLDは他の肝疾患や中等量以上の飲酒の除外により診断される.このため,核酸アナログ製剤投与によりB型肝炎ウイルスが制御された状態で,過食のために脂肪肝となった症例の診断名はB型慢性肝炎となる3).同様に,糖・脂質の過剰摂取や活動量の低下とともに中等量の飲酒を認める症例もNAFLDとは診断されない3).このように,NAFLDが診断名に記載されないことで医療従事者・患者ともに生活習慣の改善に対する意識が薄らぐ可能性がある.そのため,時代の変化に適応し得る脂肪肝診断基準の変更が議論されてきた4).
© Nankodo Co., Ltd., 2021