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はじめに
内視鏡治療の発展は目覚ましく,1990年代後半に早期胃癌に対して開発された内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection:ESD)はその後,食道,大腸,十二指腸に対する治療へと発展し,現在では早期癌に対する標準治療となっている.このような内視鏡手技を応用して,本邦では胃粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT),なかでも悪性のポテンシャルを有する消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)に対しては腹腔鏡内視鏡合同手術(laparoscopy and endoscopy cooperative surgery:LECS)が積極的に行われるようになった1).一方で中国を中心とする諸外国からは,管腔内発育SMTに対して腹腔鏡など外科的手技の介入しない経口内視鏡単独での内視鏡的全層切除(endoscopic full-thickness resection:EFTR)とクリップなどを用いた内視鏡的縫縮術が行われるようになり,多くのエビデンスが蓄積されてきた2,3).EFTRのおもな利点は臓器温存(胃壁・壁外組織の損傷を最小化)である.本邦では2020年9月に先進医療Aとして11〜30 mmの潰瘍形成を伴わない内腔発育型胃SMT(おもにGISTやGIST疑い)に対する内視鏡的胃局所切除術が承認され,登録施設を含めた複数の施設でEFTRが行われているのが現状である.しかし,SMTに対する治療方法(手術,LECS,EFTRなど)は施設によって異なり,またEFTR自体も,全工程を内視鏡単独で行うpureEFTRと,一部腹腔鏡的操作によりアシストする術式もあり4),その治療ストラテジー,縫縮法,安全面などのエビデンスは十分でなく,今後症例を蓄積していく必要がある.
本稿では,胃SMTに対するEFTRの現状を国内外の最新エビデンスを参考にしつつ,当施設での経験も交じえ,現状の成果と課題について報告する.
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