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あとがき
小寺 泰弘
pp.644
発行日 2023年5月20日
Published Date 2023/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407214140
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胃癌の治療においては,まずは確実な診断技術により適切な治療法を選択し,手術を含む集学的治療により根治を目指すことが優先されることは言うまでもない.そして誰もがそこを目指して日夜努力しているがゆえに,わが国における胃癌による死亡率は着実に低下している.手術療法においては,古くから行われてきた術式のどの部分が予後に影響しないかが細かく解析されて内容が簡素化され,腹腔鏡下手術の普及で低侵襲化が進み,ロボットの活用によりそれが完成形に到達しつつある.さらに薬物療法の進歩によりStage Ⅲ胃癌の再発の頻度が抑えられ,Stage Ⅳ胃癌もconversion surgeryの恩恵を受けるようになった.
しかし,こうした中でも,手術により胃を失った場合の胃切除術後障害の問題は未解決である.いやいや,もう解決しているよと言い切る外科医も実は存在し,その人にも敢えて執筆を依頼して今回の特集「術後QOLを重視した胃癌手術と再建法」を組んだ.とは言え,私自身はこの問題はまだ解決していないと考えているし,胃切除術後障害の研究の手法についてすら,執筆者によって考え方はまちまちである.それでも現時点でこのテーマについてこれ以上の内容は望めないような熱心な研究者で執筆陣を構成することができ,この領域の現状を知る観点から読み応えのある特集になったと自負している.この特集のコアは永年にわたって胃切除術後障害の研究に取り組まれ,多少の意見の相違も寛容に受け止めるALL JAPANの研究体制を確立され,リーダーシップを発揮して来られた中田浩二先生(東京慈恵会医科大学,現所属・川村病院)による「PGSAS研究」である.
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