FOCUS
複合的免疫療法—放射線照射とがん免疫療法の併用療法
河野 浩二
1
Koji KONO
1
1福島県立医科大学消化管外科学講座
pp.356-361
発行日 2021年3月20日
Published Date 2021/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407213299
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はじめに
ここ10年,免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitors:ICI)を用いた癌免疫治療は急速な進歩をとげ,標準治療のkey drugとなる癌腫もあり,癌治療のmain streamを進む勢いである.癌を扱う外科医にとっても,ICIに関する知識,臨床経験は必須な状況であり,すでに,neoadjuvant chemotherapy(NAC)としての有用性を検証する臨床試験,adjuvant settingでの臨床開発が積極的に進み,良好な成績が報告されつつある.すなわち,ICIを用いた癌免疫療法は腫瘍外科医にとって必須なパーツと言える.
一方,ICIが有効であることは疑いのないことであるが,単剤による奏効率はおおむね10〜30%といまだ満足できる結果ではなく,さらなる改善の余地がある.ICIにおける現在進行中あるいは今後の方向性としては,①有効例を選別するbiomarkerの同定,すなわち個別化の方向と,②複合免疫療法による奏効率の向上があり,熾烈な競争が世界中で進行中である.複合免疫療法に関しては,抗がん剤との併用,複数のICIの併用,放射線照射との併用,抗VEGF療法との併用,癌ワクチン療法との併用など,様々な選択肢がある.そこで,本稿では,「放射線照射とICIの併用療法」に焦点をあて,その理論的背景,現状,今後の課題を概説する.
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