書評
—Justin B. Dimick, Gilbert R. Upchurch Jr., Christpher J. Sonnenday(編) 安達洋祐(訳)—症例で学ぶ外科診療—専門医のための意思決定と手術手技
土岐 祐一郎
1
1大阪大大学院・消化器外科学
pp.249
発行日 2018年2月20日
Published Date 2018/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211951
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本書の元は米国の外科専門医の口頭試験対策用の学習書であるが,その中から日本の外科医がよく遭遇する半数弱の疾患を抜粋したもの(全123章中の55章)である.そこに訳者の安達洋祐氏オリジナルの示唆に富んだ「補足」を追加し,さらに関連論文や関連書籍(『ゾリンジャー外科手術アトラス』1)など)の紹介を加えて,わが国の現状に即して読みやすく興味深いものとなっている.目次を見ると疾患の羅列で辞書のようであるが,各項目を開くと現病歴から,診断,手術所見,術後合併症と実際の症例の画像を提示しながら,ストーリー立てて解説し,さらに「症例の結末」という項目まであり,実際の患者の診療をしている気分で一気に読んでしまう.
このように横断的な知識を総動員して実際の診療のプロセスに即して縦断的に問う口頭試問は,現在わが国でも医学部学生の卒業試験でadvance OSCEとして多くの大学に取り入れられている.過去5年くらい担当しているが,幅広い知識と症例に即した柔軟な思考が求められ,学生にとっては厄介な試験の一つである.
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