増刊号 消化器・一般外科医のための—救急・集中治療のすべて
Ⅱ章 外傷外科
総論
救急室での開胸術と開腹術・出血性ショック時の大動脈遮断手技
益子 一樹
1
,
松本 尚
1
Kazuki MASHIKO
1
1日本医科大学千葉北総病院救命救急センター
pp.128-132
発行日 2016年10月22日
Published Date 2016/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211361
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■はじめに
外傷初期診療においては,詳細な損傷検索に優先してABCDEアプローチによる致死的な生理的異常の確認と,速やかな是正を行う,という鉄則がある.特に心停止が切迫するようなB(呼吸),C(循環)の異常においては,その回避のために迅速な開胸,開腹手術が必要となる.D(意識)の異常においても,B,C異常に起因する低酸素が意識障害の原因であったり,ショックの遷延が二次的脳損傷の要因となりうる場合があるため,時には頭部外傷(切迫するD)の精査よりも呼吸・循環に対する手術が優先される.このような,生理学的異常の是正を目的に行う蘇生的手術には,まさに外傷外科のエッセンスが詰まっているといっても過言ではない.
本稿においては,救急室にて行う開胸・開腹手術の特殊性と,施行時の心構えや注意事項,出血性ショックに対する大動脈遮断手技について説明する.
前提:題名には「救急室での」と限定しているが,手術を行う「場所」が重要なのではない.外傷蘇生の一環として瞬時の決断のもとに遂行される蘇生的手術について概説するものであり,救急室であっても,集中治療室であっても,手術室であっても,そのコンセプトに違いはない.また,ここでは救急室における速やかな血管造影やCT撮影を可能とした,いわゆる“Hybrid ER”でない場合を想定しており,Hybrid ER下での初期診療においては他稿を参考にされたい.
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