ラパコレUpdate 最近のコンセプトと手技・2
標準的ラパコレ—The Critical View of Safetyと標準術式
森 俊幸
1
,
鈴木 裕
1
,
阿部 展次
1
,
杉山 政則
1
Toshiyuki MORI
1
1杏林大学消化器一般外科
pp.1132-1138
発行日 2016年9月20日
Published Date 2016/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211298
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はじめに
本邦に腹腔鏡下胆摘術(LC)が導入されて四半世紀が経過した.米国でLCが導入された際に胆道損傷(bile duct injury:BDI)の頻度が開腹胆摘術の5倍にものぼることが報告され,医学的な問題ばかりでなく,多くの訴訟の原因ともなった.本邦においても1990〜2001年の調査でLC術中胆道損傷は0.66%であり,開腹手術の報告(0.1〜0.2%)に比して著しく高いことが知られるようになった.当初,LC術中のBDIの原因は外科医の技術習得度が低いためとする論調が多かったが,症例の集積によりBDIは減少しないことが示された.その後多くの報告が,腹腔鏡手術におけるBDIは解剖誤認という根本的問題に起因すると指摘している1).この解剖誤認は画像システムの表示品質によるものではなく,視認性が著しく向上した現在のFull HDシステムでも同様な誤認が起きている.LCは低侵襲な術式と考えられているが,LC術中のBDIは病態が複雑であり,いったん起きると入院は長期化し,胆管空腸吻合などのrevision手術も必要となる.また,胆汁性肝硬変から肝移植となった症例や死亡例も報告されている.すなわちLCの低侵襲性というメリットを得るためにはBDIを起こさない術式が必要であり,BDIを回避できる術式が標準的術式の核心をなす.本稿では,技術認定制度で求めているThe critical view of safety(CVS)の中核をなすアイデアを再確認し,技術認定制度による手術の標準化によるBDI疫学の変遷を概観するとともに,CVSを達成するためにわれわれが標準とする術式を述べていきたい.
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