FOCUS
外科診療における病診・病病連携の展開
浅尾 高行
1
,
解良 恭一
2
Takayuki ASAO
1
1群馬大学未来先端研究機構ビッグデータ統合解析センター
2群馬大学大学院医学系研究科がん治療臨床開発学
pp.1123-1131
発行日 2016年9月20日
Published Date 2016/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211296
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はじめに
高齢社会を迎え,これまでの病院完結型の医療から,個々の施設が果たすべき役割を分担した連携体制のなかで医療と福祉の一体化へと時代は進んでいる.それを支える3つの基盤制度が開始される2016年は,医療連携にとって注目すべき変革の年となった.新基盤のひとつは電子化された診療情報提供に診療報酬が手当てされたこと,もうひとつはマイナンバー制度で,最後に認定がん医療ネットワークナビゲーター認定制度の開始である.
これまでも,外科医はがん診療連携パスの作成と運用を通して地域診療連携に少なからず携わってきた.2016年の診療報酬改定では,地域診療連携の対象は脳卒中や5大がん以外にも拡大され,地域連携は診療拠点病院の特定の医師だけの問題ではなくなった.ところが,先行して行われてきたがん診療連携パスによる地域連携は,一部の例外を除いて十分に活用されていないのが現状である.今後,診療連携の拡大と推進には,がん診療地域連携パスが普及しなかった原因を解析し,改善すべき問題点を明らかにしたうえで対応する必要がある.
がん診療連携パス運用においてこの数年間で明らかとなった問題点として,以下などが挙げられる.
①かかりつけ医での画像検査に対応できない
②化学療法ができる連携先が少ない
③施設間の情報共有が不十分
④診療連携をコーディネートする人材不足
当教室では,これらの問題を解決するためのシステム開発とモデル事業のなかで実用性,有効性を検証してきた.地域連携を円滑にするためのこれまでの取り組みを紹介し,いま外科医が直面し変革のなかにある病診・病病連携について述べる.
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