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はじめに
2009(平成21)年度厚生労働省がん研究助成金による「がんの代替医療の科学的検証に関する研究」班で行われた「がん診療に携わる医師および薬剤師の漢方治療と代替医療に関する意識調査」によれば,がん患者に対して漢方を処方したことがある医師は,73.5%であった1).
しかし,これまで漢方医学は経験則でしか語られることがなかったため,厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究「がん治療の副作用軽減ならびにがん患者のQOL向上のための漢方薬の臨床応用とその作用機構の解明」(班長 上園保仁)において,漢方薬の作用メカニズムについての科学的エビデンス蓄積の現状ならびに漢方薬を用いた臨床研究における最新情報について報告することを目的とし,がん拠点病院と緩和ケア病棟を有する病院に従事する医師,薬剤師,看護師を対象とした漢方薬の教育プログラム・漢方キャラバンセミナーが2012(平成24)年と2013(平成25)年に行われ,全国から医師956名,薬剤師・看護師・栄養士・研究生等261名,総数1,217名が参加した.
また,漢方薬の処方は漢方理論による診断をもとに行われるため,西洋医学の最先端であるがん診療の現場には,漢方理論はどれも馴染みにくく理解しがたいもので,漢方医学を修めた医師は少なく,がん患者が漢方薬を希望しても処方されることは難しかった.
しかし,がん診療で使用される抗がん剤によって引き起こされる病態は,漢方医学でいうところの「証(しょう)」と一致していると考えられた.このため,漢方医学を現代語に訳し,がん診療を行っている臨床医が簡単に理解し活用できるように翻訳したのが「がん漢方」である2).
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