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今回の特集は大腸がんに対する腹腔鏡手術です.NCD(National Clinical Database)のデータによると,日本では現在,直腸がんに対する手術のうち約60%が腹腔鏡手術で行われています.がんに対する手術を臓器別で見ると,直腸がんが最も高い頻度で腹腔鏡手術が導入されており,肝臓がんをはじめ腹腔鏡手術の導入率が低い臓器もあります.このように臓器によって腹腔鏡手術導入率が大きく異なるのは,どうしてでしょうか.一つの理由は,対象臓器の解剖学的部位による違いでしょう.直腸がんでは狭い骨盤内での操作が必要となりますが,腹腔鏡による拡大視効果と,モニターで術者と同じ術野を共有する腹腔鏡手術が導入しやすかった背景があると考えられます.ほかに大きな理由として,デバイスの発達があると思います.大腸の腹腔鏡手術は1990年代初めに導入されていますが,その後すぐに広く普及したわけではありません.様々なデバイスの発達があり,その結果,施行率が増加しました.腹腔鏡手術の普及には,このようなデバイスの発達が大きく影響すると思います.そういった意味ではほかの臓器,例えば肝臓がんなどに対して腹腔鏡手術が十分広まっていないのは,現在デバイスの発達が必ずしも十分ではない可能性があるのかもしれません.同じようなことは,現在注目されているロボット手術,すなわちダヴィンチ手術にも言えると思います.ダヴィンチシステムは最初の型が登場してから改良が加えられ,現在は4世代目のダヴィンチxiが登場しています.ダヴィンチxiは,これまでのダヴィンチシステムにあったアームの干渉など,様々な問題点に対して改良がなされています.これらの改良により,セットアップも含めた手術操作が格段に行いやすくなっています.これらの改良はダヴィンチの更なる普及に大きく影響するでしょう.このように腹腔鏡手術では,デバイスの発達が,手術自体に非常に大きな影響を与えることがわかります.今後は,デバイスの発達のための研究がますます重要となっていくでしょう.そして,より良いデバイスの開発のために必要なのは,日頃の手術からの外科医のフィードバックであり,手術を通して問題点を見極める外科医の「目」が新たな開発の鍵となるでしょう.
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