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本年4月より大腸癌の化学療法の新たな分子標的薬が保険適応となり,再発大腸癌の治療において従来から指摘されてきた,いわゆるdrug lagの問題が解決されようとしています.ここ10数年の間に大腸癌に対しては様々な薬剤が開発され,治療成績が向上してきました.これらの薬剤のなかには,わが国で開発された薬剤もありましたが,こうした薬剤も海外では使用できるのに,わが国では使用できないといった皮肉な問題も発生していました.再発大腸癌の治療において,海外に遅れをとっていたわが国もようやく同じスタートラインに立てたということは,今後の治療に大きな影響を与えることと思います.このような大腸癌の化学療法の問題をみてもわかるように,海外とわが国では,治療上様々な相違点があります.特に外科治療においては,わが国の患者の海外との体型の違い,外科医の手術に対する考え方の違いなど,様々な背景の違いがあると思います.そこで今回は,外科治療におけるわが国と海外との相違点に注目して各臓器の癌治療の特集を組みました.今回の特集では,消化器,内分泌,呼吸器など様々な疾患において海外とわが国との間に差があることが示されています.Evidence based medicine(EBM)の重要性が唱えられていますが,evidenceレベルが高いrandomized controlled trialの多くは海外で行われ,その結果が報告されているのが現状です.このため,evidenceレベルのみに注目すればとかく海外の臨床試験に準じた治療がいわゆるEBMに基づいた治療と考えられがちです.しかし外科の領域においては,従来わが国が海外をリードしてきた分野があるのも事実です.こういった違いを十分認識して海外からのデータを解釈,利用しないと,わが国の実情に合った治療は行えないと思われます.そういった点からは,本特集で紹介されているわが国の外科治療の様々な特徴を認識しておくことはきわめて重要なことと考えられます.わが国と海外の相違点を十分理解したうえで,最適な日常臨床を可能とするために,本特集がお役に立つことを期待しております.
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