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あとがき
渡邉 聡明
pp.728
発行日 2009年5月20日
Published Date 2009/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102581
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社会の注目を集めた福島県立大野病院の事件をはじめとして,医療訴訟は現在,医療を行っていくうえで重大な問題となっています.診療科別に医療訴訟の件数をみてみると,内科,外科系が多い一方,注目されるのは整形外科や美容外科の件数が多い点です.整形外科では悪性疾患も扱いますが,運動機能に関する悪性疾患でない病態とも深くかかわっています.骨折をはじめとする運動機能に関する疾患の治療は治療効果が短期的に現れ,これらは患者側から明確に評価できるものです.一方,運動機能の改善を主目的として治療が行われるため,患者側からは,きわめて具体的な治療効果が要求されます.また,美容外科においては,整容上の問題が客観的な評価以外に,患者個人の価値観のうえで結果が評価されるという特性があります.こういった点が整形外科,美容外科の医療訴訟件数が多い理由にもなっているのでしょう.
一方,消化器疾患の外科治療においては癌をはじめとする悪性疾患の治療が大きな比重を占めています.しかし,患者側からみると,手術直後に判定できるのは創の大きさや合併症の有無などで,本来の治療目的である癌の根治度はすぐには判定できません.これに対して,良性疾患の治療は大きく異なります.治療の目的が癌による生命の危機を回避するのではなく,疾患による様々な症状のコントロールがその主目的となります.
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