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最近,“肛門”が注目されています.というのは,従来直腸癌の手術で,視野の確保が難しかった肛門管周辺(あるいは骨盤深部)を経肛門的に腹腔鏡手術のデバイスを用いてアプローチしようとする,いわゆるTAMIS(trans anal microsurgery)と称される術式が注目されているのです.海外の学会に行くと,腹腔鏡手術で使う単孔式用のポートなどを経肛門的に用いて直腸癌に対して腹腔鏡手術が行われています.先日見たビデオでは,経肛門的に脾彎曲部の授動を行っていました.脾彎曲部の授動までしなくとも,TAMISによる直腸切除術(TME)や,ロボット手術による経肛門的アプローチも報告されています.内視鏡手術の利点である拡大視効果を十分に生かした肛門管付近の新たなアプローチが期待されているのです.
一方,今回は,肛門の良性疾患に対するアプローチについて特集を組みました.どの領域の疾患でも同様と思いますが,悪性疾患と比べて良性疾患に対する治療では術後の機能,整容性などを含めた総合的な治療成績がより強く求められます.特に肛門の良性疾患では排便により症状が出る可能性があるため,いかに症状を取り除き,術後のQOLを向上させるかが重要なポイントとなります.一見,同じように見える病変でも,基礎疾患,全身状態,病変の場所,年齢などにより治療法が微妙に異なってくる場合もあります.また一回の治療でうまくいかない場合には,再発を繰り返しQOLを損なう場合もあります.いかにQOLを確保して良い治療を行うかが重要となります.肛門疾患は日常診療で遭遇する機会があるものの,病態が多彩なため,微妙に異なる病変それぞれに対してベストな治療を行うのは必ずしも容易ではありません.そのためにはかなりの経験が必要となります.そういった意味で,今回は極めて経験豊富なスペシャリストの先生方に各疾患について解説していただきました.この分野の専門の先生方が豊富な経験の上に確立された治療手技を習得していただければと思い,特集を企画いたしました.是非とも,スペシャリストの技を“盗んで”いただければと思います.
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